GOOD DESIG LAB の研究活動により抽出された重要項目を北斗七星理論として集約した。参加企業の事例は、ここにあげた項目に添って解説する。
ビジネスモデルは7つの要素が結びついて全体を構成し、1〜4行程までの質が事業全体の創出価値を決定する特に重要なプロセス。各項目の順序はプロジェクトの特性ごとに異なる場合があるが、ここでは基本形プロセスを紹介する。
新型ポスト開発による配達問題の解決
オンラインショッピングにより物流が増え、再配達の問題は本格的な社会問題となった。(メール便は年間56億個あり、20%程度が 再配達となる状態)
単純にポストの投入口を大きくすると、盗難のリスクがあり、個人ごとに宅配ボックスを所有することが、社会問題の解決に繋がる。
大型ポストの開発 大型メール便が受け取れる投入口の大きなポストを開発。かつ投入口に盗難防止用の機構を設けることで盗難の問題を解決。集合住宅用(BtoB)と個人宅用(BtoC)を製作。個人宅用は大手通販会社で購入可能。
共同プロジェクト 本プロジェクトは新型ポストの開発元である株式会社ナスタ、大手物流会社と大手通販会社の協力体制で始められた企画である。
導入のための工夫
基本的にはBtoBで発売する商品であり、集合住宅用も存在する。
個人が当該ポストの購入した際には大手通販会社ポイント3,900円分を還元することで導入を促そうとした。
→ しかし、当該ポストは十分に普及するには至らなかった。
課題/動機を持つのは『誰か』 当該ビジネスには「大手通販会社及び大手物流会社」「物流会社」「ナスタ」「ユーザー(個人又 集合住宅 仕様決定者)」の4者が登場人物として現れるが、本課題の解消を一番強く求めているのは 「物流会社」である。 ユーザー 追加費用なく再配達を利用でき、 解消の需要は比較的低い。しかし当該ポストを費用・労力をかけて導入するのはユーザーである。 このアンバランスさが、導入・普及を妨げている。
一般住宅用大型ポストという商品概念 本商品は新しいポストとして開発された。価格は3万円強。だがポストとしては大きく、デザインに不評があった。かつ実質的には宅配ボックスと役割が類似し、マンション仕様に対応するには、セキュリティを付加していく必要性があった。
新規な商品概念を導入させるために ポストという名称を使わず、別の概念の商品として認知させる段階から行う必要があった。また、荷物を投入する配達員が「一目でポストと認識可能」で「開けて荷物を入れ、鍵をかけるまでの操作性が必ずわかる」ことが必須条件。
フレキシブルな決断 代表が直接セッティングし、社会問題に直面し、かつ巨大な規模の大手物流会社及び大手通販会社が名を連ねた時点で、メディアにおける話題性/導入までの参入障壁の解消が期待され、開発を決断するに至る理由となっている。
大手物流会社及び大手通販会社 大手物流会社の取り計らいで、当該ポストで書留が受け取れるようになったが、公的な性質が強く、臨機応変な対応は不可。大手通販会社は当該ポストを購入した際のチケットの提供。
物流業界 佐川急便は当該問題を解決するために協力的だったが、その他の物流との繋がりがないため、物流業界全体の総意/協力を得ることが現時点では困難。
「大手物流会社」の広告効果 大手物流会社が協力している商品という事実に対する信頼度で、BtoBの購買に繋がっている。
動機の不在
物流会社は、それぞれが再配達の問題を解決するために、別々の会社に宅配ボックス開発の打診を行っている。
大手通販会社,楽天等のECサイトも、当該宅配ボックスの開発が他社の再配達の問題をも解決するため、一社が率先してソリューションを起こすモチベーションが高くない。
ナスタはECサイトの定める箱の大きさ等の仕様に従って開発してもコストをユーザー以外から回収できるビジネススキームが構築できていない。
ユーザーは再配達が無料で享受できる現状で、比較的高価な宅配ボックスを購入する動機がない。
社会問題の解決の実現
「個人毎に宅配ボックスを持てば 再配達の問題は解決する」というのは、自明なロジックだが、これまでに記載した通り、それぞれの登場人物の利益/動機が成立していない限り、当該ビジネスモデルが普及することは難しい。
但し、本ビジネスモデルが期待されるに足る理由は、やはり大手物流会社及び大手通販会社と公式に協力関係を提携した実績にある。
一例としては物流業界と提携し、再配達を有償化するだけで、当該ポストをユーザーが購入する動機は十分に成立する。
大きさについての改善
当該ポストは大きな郵送物を基準に、大きさを定め、それが不評の基となっているため、現実的に導入可能な寸法のヒントを所有している。
また、現在はそれぞれが自身の裁量で定めている郵送物の大きさを、画一化する方向で働きかけることも、現在の協力関係から言えば、実現可能性は有ると考えられる。パイオニアが物の規格を定める、ナスタはそれを達成する下地を既に有している。