フリーアドレス診察室と電子カルテの仮想化技術を用いて、ユニバーサル視点で設計した全科対応型外来診察システム。受付は一つで14科の診療に対応する次世代型診療システム。
課題1
手術室、検査室、病棟の広さは守り、外来診療室を変える必要に迫られた
限られた敷地と費用の中で、次の建て替えまでの約40年を見据えて、めまぐるしい時代の変化に応える準備として取捨選択を必要とした。
課題2
一般的な外来診療室は、外来患者の移動動線が長くスペースと人員が必要。
外来患者が複数の科で診療を受ける場合には、フロアーをまたいだ複雑で長い動線移動を強いられた。その日の診療の有無にかかわらず、各診療科ごとに診療スペースと人員が必要。
課題3
新システム導入に対する院内統率の困難性
医師と患者の動きが逆になるユニバーサル化は、働く側の意識改革が難しい。特に医師の抵抗感は障壁となり、理解を得る努力が必要だった。
先端医療から福祉まで『生きる』を応援する。
関連施設のIT化を積極的に導入。外来患者の診察室のユニバーサル化、電子カルテの仮想化、セントラルキッチン、SPD(院内物流システム)も整備。
移動距離が圧倒的に短く、患者が受ける診察時間が有効化
複数受診の場合は移動距離が圧倒的に短く済む。医師の診察後に看護師が次の説明をする、栄養士が食事の説明をしに来ることで、患者が受ける時間が有効化する。予約をしたら楽だと感じてもらえるために、受付時に入場制限をかけ、1時間前にならないと、カードが通らないしくみに。予約によって5~6割の患者のカード受付から30分以内に診察を終える工夫。
BYOD , Bring Your Own Device"医師の働き方 改革
電子カルテは外からアクセスし記載が可能。患者の状態を電子カルテで確認すれば病院へ行く必要の有無がわかる。
診療科目の新設等状況変化への対応が柔軟に、院内意識改革、サービスの向上
従来型の外来診察室で必要とした、新しい診療科目が増える場合に院内のスペースを削っての新設分スペースの確保が不要となる。医師他職員のインナーブランディングが浸透。
グループ内カルテ情報の統合、仮想化、パーソナルヘルスレコード、2014年に仮想化の環境を整えて、ユニバーサル外来実現化へ。仮想化に伴い3重のセキュリティーを構築。1994年から共同購入を三菱商事と共に行い、現在では全国300施設に展開。病院にコンビニエンスストア(ローソン)の1号店も恵寿総合病院から始まった。
診療室内は全室共通仕様でミニマムに整備。医師の私物持ち込みは原則不可。必要な物品はバックヤードに医師別パックとして準備。必要な資料は医師が個別に電子化して持ち込む仕組みにしたので、私物持ち込み禁止の徹底が保たれている。
色で機能を明確にしたいという思いから、4色を採用。医師がネイビー、看護師がバーガンディ、医療メディカルスタッフ・栄養士・薬剤師・リハビリはピーコックグリーン、介護がオレンジで全法人内で統一。全法人施設の機能がひと目で分かる。
コールセンターが空き時間を利用して介護記録の代行入力を兼務。介護の本来業務が平均1日1時間程度増加。
経営判断は理事長の神野正博氏、プロジェクト統括は常務理事神野厚美氏。先代から革新的な病院経営が基本方針。専門職からの要望意見は部分最適が多いが、全体最適になる意見を尊重した。理事長が決済を下ろすまでに常務理事が構想と情報を精査して伝える。病院経営を知り尽くした厚美氏が統括を務め、決断の直前までディスカッションを重ねてブレない決断を貫いた。
①知の創造:論文制作。仕事のエビデンス化を勧める。②技の熟練:専門技術の段階的なスキルアップ③定年退職した人をシニアイノベーターとして技術や知識を指導
患者からの予約や予約変更は電話にこだわる。介護のデイサービス、診察から介護まで、全て人が対応するということを大切にする。事業の中核は大規模なシステム化・デジタル化の導入、タッチポイントではヒューマンタッチを重要視している。
完成形は、診察室は本当に1つで、掛かりたい科全部の医師がそこに来てくれる。現在のような5分の診察ではなく、患者に15分〜30分の時間を割り当てて病状と向き合う診療になること。受診する科が判らないので、プライバシーの配慮となる。