ビジネスモデルを構成する7つの要素北斗七星理論

GOOD DESIG LAB の研究活動により抽出された重要項目を北斗七星理論として集約した。参加企業の事例は、ここにあげた項目に添って解説する。
ビジネスモデルは7つの要素が結びついて全体を構成し、1〜4行程までの質が事業全体の創出価値を決定する特に重要なプロセス。各項目の順序はプロジェクトの特性ごとに異なる場合があるが、ここでは基本形プロセスを紹介する。

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北斗七星理論による分析:マンション家計簿

1 課題抽出 企業が抱える問題、社会的課題、ポジティブ要素も広く調べて要素を抽出。

自社製品の性能の伝達 自社で優れた省エネ住宅を開発したが、建物性能は等級によって大雑把に区分けされ、ユーザーに自社の住宅性能を伝える必要があった

2 基本設計 コンセプトの立案。抽出した課題がwin-winの関係となるアイデアを築く

「ユーザー目線」 マンション業界は、「ユーザー視点」の感覚が薄く、隠れていた要素を見える化すること自体に実現困難性がある。

「家の燃費」という視点 クルマの燃費のように、毎月の光熱費を住戸ごとに、具体的な金額として表示することで、建物性能の見える化を目指した。

マンションの「ランニングコスト」の見える化 従来マンションの購入者は、住戸毎の価格に注目し、住み始めてからかかる経費について知ろうとする需要がなかった。当該伝達は、ユーザーに新たな価値観を芽生えさせ、自社の優れた製品性能の需要を喚起させる。

3 詳細設計 ビジネスを構成する具体的作業。製品、サービス、知財、収益獲得の計画と実施

光熱費等の算出/新たな基準の創出 国の定めたマンションごとの等級表示ではわかりにくく、実際の光熱費とはかけ離れている現場があった。
→ 自社のノウハウで算出方法を補足して行った。

1戸ごとに建物の省エネ性能と、住戸ごとの位置・角度による陽当たり、税金・管理費を含めた様々なステータスから、発生する金額を具体的に算出するシステムを開発した。

パンフレットの作成 家の燃費に関する考え方、算出基準、実際の生活と発生する経費のシュミレーションが掲載されたパンフレットを配布。
→ 詳細な数値を掲載し、光熱費算出のプロセスを伝え、説得力をユーザーへ伝達した。

従来の価格表とのリンク 購入者用に、マンションの販売価格表示の定番型「鳥かご」のフォーマットに、家の燃費の金額を落とし込んだ。
→ パンフレットに対して、わかりやすさを追求。

自社商品に横串を刺すこと 従来のマンションは一棟ごとのプロジェクトであり、それぞれが大きな縦割りの事業であるため、横串を通すことを提案し、実行できる者が従来いなかった。
→ 大規模組織故の実現困難性であり、【決断/決定】により解消される。

4 決断 ビジネス化の是非を誰がどのように決めるかプロセスにも新規性が求められる。

課題としての社内認識 マンションという高価な買物をするユーザーに対して、光熱費等のランニングコストまで説明するのは、デメリットにしかならない、という否定的な認識があった。

膨大な説明プロセスの達成 社内決裁や社内浸透のために、膨大な量/回数の説明を行なった。
→ 事業部門に意義を語り、協力を得る。
→ 販売センターごとに足を運び、 共感を得る。
→ トップを説得して予算を確保。
個別のプロジェクトから切り離し、 全社費用として一定期間の費用を賄う。

事業化のタイミング 全社に浸透したところで事業化
→ 事業に必要という意識が社内に浸透した段階で、各プロジェクトで予算化した。

5 人材・組織 プロジェクトの参加者、意思決定者、協力事業者に適正な役割や関係性をつくる。

デザイン成果物による認識の共有化 「家の燃費」という概念について、冊子や「鳥かご」フォーマットという優れた営業ツールを準備しても、それを営業担当者が説明しなければユーザーには伝わらない。
本事業の担当者が各営業所へ赴き、「家の燃費」の意義/仕組みについて、説明を徹底した。

6 販売・ユーザーとの関係 企業が提供しユーザーからフィードバックされる情報価値が市場形成の鍵となる

隠れていた価値の顕在化 方角や建物位置において人気の低かった低層住戸や内側住戸のランニングコストが低いことが明確になり、それらの商品力が向上した。
→ユーザーがマンションを購入する
にあたり、新たな判断基準を提示することができた。
→他社製品との差異化

7 展開性 業界に与える影響、投資、展開プロセスの計画と事業展開後の柔軟な状況判断が将来性を決める。

商品へのフィードバック マンションの角度をわずかに変更するだけでランニングコストが変動することや、自社の省エネ製品の性能が一層明確になった。
→今後の省エネ技術の開発精度を向上させることが可能になった。

業界内の価値観の浸透 自社以外のメディアが「家の燃費」という表現を使用し始め、業界に対する効果・影響が大きい。
→今後は他社も「家の燃費」を算出することで、初めてユーザーが比較して選ぶことが可能となる。