Good Design Lab

CASE
09

温室内環境モニタリングサービス
プランテクト

Bosch の中小規模ハウス農家向けAI 病害予測機能を搭載した環境モニタリングシステム。大規模向けが多い市場で、実件数が多い中小規模農家の潜在ニーズに合わせた取り組みにより、個人農家でも導入しやすいビジネスモデルを開発。グローバル企業が新領域に参入した好例。

開発の背景

Boschはドイツをベースにしたグローバル企業。世界中の支社で社内スタートアップ制度を行っている。与えられた開発期間が3年。日本からイノベーションを起こすべく本事業を企画した。プロジェクト開始当初より、ユーザー中心、アジリティを必須用件として進めてきた。ユーザーの声を大事にしてユーザーサイドに立った商品作りを始めている。

1 課題抽出企業が抱える問題、社会的課題、ポジティブ要素も広く調べて要素を抽出。

課題１
高齢化で差し迫る農家の厳しい現状。中小規模農家を救う打開策を
農家数は減少、加えて平均年齢は66.8歳と深刻な高齢化。作業の軽減化、収入の不安定、気候のあおりを直接受ける現状の打開策が求められる。

課題2
農家の意欲の高さとはアンバランスな技術発達の現状
農家は技術を取り入れる関心は高いが、一方で大型で複雑な操作性や工事など初期投資が大きい新技術の導入はハードルが高い。

課題3
心理的な障害が新技術導入の壁
「今まで慣れている作業方法が続けられるのか。」という新技術導入への不安、心理的な障壁が大きい

2 基本設計コンセプトの立案。抽出した課題がwin-winの関係となるアイデアを築く

コンセプト
アイデア

中小規模農家に向けたコンパクトで業界初の病害予測
IoTによる環境モニタリングはベーシックな技術。他社との差別化は、コンパクトで業界で初の病害予測。

バリューチェーンダイアグラム

創出する価値

「IoT技術を使ってみたい」という意欲の向上
小型でやさしいUI・料金体系の気軽さから、これまで多くの農家が抱いていた導入への不安が解消されて、「IoT技術を使ってみたい」という意欲を高めた。

農家の根幹ニーズに応える業界初の病害予測
本当に病害に困っていて何とかしたいという多くの農家が持つニーズを満たす。感染後の高価な薬品使用に比べて、予防はトータルコストは低く抑えることができる。

ニーズからサービスまで一貫したビジネスデザインでユーザーに届くしくみの創造
業界初の病害予測・中小規模農家仕様・初期投資不要で月極契約の三位一体で、ユーザーに寄り添った商品プランをトータルに開発した。

3 詳細設計ビジネスを構成する具体的作業。製品、サービス、知財、収益獲得の計画と実施

農家へ徹底したインタビューから発想したフレンドリーなUIシステム

UXの専門家を中心にしたプロジェクトチームで、徹底したインタビューで進めたインクルーシブデザイン。UIは、複雑な情報を排除し農家が本来知りたい内容に絞って表示する簡単な操作性を達成。

LoRa技術を使って工事不要の無線システムを独自に開発

一般的な製品はケーブル配線で、ハウスの中はケーブルだらけに。プランテクトは小型設計に加えてLoRa技術による無線技術を使い、ビニールハウス内をクリーンに保つ。時々に応じたセンサーの移動や、システム拡張が容易。電気工事の不要化で導入コストを軽減。

導入しやすい料金システムを構築して心理的な障壁を減らす工夫

料金はパッケージ化で導入しやすさを提供。ユーザーが必要に応じて拡張が可能な料金システムを構築して、心理的な障壁を減らした。初期投資をなくしたため、BOSCHとしてはハードウェアからの売上が厳しいが、携帯電話と同様に契約期間に分割で回収する計画。

4決断

ビジネス化の是非を誰がどのように決めるかプロセスにも新規性が求められる。

グローバル規模で「変化する」ことへ取り組み

長い伝統を持つ企業は、ともするとコンサバティブな体質になりがち。近年グローバルな規模で「変化する」ことに取り組んでいる。

5人材・組織

プロジェクトの参加者、意思決定者、協力事業者に適正な役割や関係性をつくる。

国籍や専門が多様性に富んだ人材の配置

国籍や専門が多様性に富んだチーム編成。社内外から募集されたメンバーで、プロジェクトチームは17人。日本人と日本人以外の割合は2対1、公用語は英語。

6コミュニケーションデザイン

企業が提供しユーザーからフィードバックされる情報価値が市場形成の鍵となる

徹底したインタビューから始めたインクルーシブデザイン

農家への徹底したインタビューとコミュニケーションから潜在ニーズや心理的問題など、多くの課題を発見した。コミュニケーションを重視した戦略によって、使用者の声に寄り添った画期的な開発と会社の課題を達成した。

7将来性・展開

業界に与える影響、投資、展開プロセスの計画と事業展開後の柔軟な状況判断が将来性を決める。

新分野での農業経営を拡大

海外展開、ハウス農業経営に関わる支援技術など、農業経営での展開。