CASE
01

不動産業者による居住者専用食堂
トーコーキッチン

有限会社 東郊住宅社
http://www.fuchinobe-chintai.jp
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開発の背景

  • ・神奈川県淵野辺駅周辺に1600戸の不動産の仲介をしている地域密着型不動産屋
  • ・周囲に大学がある(青山学院大学、麻布大学、桜美林大学)
  • ・通学や通勤のために消極的に選ばれる物件が多い。

1 課題抽出 企業が抱える問題、社会的課題、ポジティブ要素も広く調べて要素を抽出。

課題1
学生の需要増大
学生マンションに対する需要が増加。特に男子学生の増加で食事面に安全確保の需要が高まった。

課題2
商品の資産価値アップ
1600室の資産価値を一気に アップする裏技はないか? 物件に依存しない企業努力 とは何か思案。

課題3
企業特性の模索
礼金・敷金ゼロでの差別化は難しい。特徴を出せなければ、企業の生き残りは難しい状況。

2 基本設計 コンセプトの立案。抽出した課題がwin-winの関係となるアイデアを築く

コンセプト
アイデア

食を通したゆるやかなコミュニティ形成で、顧客満足の充実
賃貸物件のルームーキーのみで入室可能な入居者専用食堂

バリューチェーンダイアグラム

基本設計のアイデア構想は、価値の流れを図に表して行う。図にすることで関係を構造的に整理・把握・評価できる。登場者は事業者・エンドユーザーなどの他に、誰を設定するかが事業アイデアの鍵となる。登場者それぞれの間に、価値の流れを示す矢印が循環する関係となれば、基本設計の完成となる。

ここでは参加企業の事業を図で表し、構造的に完結した仕組みになっている状態、つまり完成度の高い基本設計であることを確認することができる。

diagram

創出する価値

入居者にとっての価値
入居者には男子学生が多く、健康な食の環境が得られることは生活の質が向上した。それは同時に入居者の家族にとって子どもの健康に対する安心となり、事業者への信頼や期待が上がる。また、シングルマザーなど子育て世代の入居者には、食堂の利用者がと限定された環境は、安心・安全の満足度がが高い。

東郊住宅社にとっての価値
食堂の機能性とコミュニティが作り出す安心・安全・信頼によって、安定した高入居率を達成し、東郊住宅社とマンションオーナーにとって事業の根幹的利益を獲得。またユーザーの心が満たされた成果として、ユーザーが自発的にSNSを使って価値情報を発信して、食堂のコミュニティ形成や広報の一翼を担っている。その背景には、食堂というシステムが生む価値だけでなく、社長が食堂で気さくなコミュニケーションを重ねることによって生まれた信頼が大きく関わっている。

食堂にとっての価値
安価で美味しい食事と安心して過ごせる場の提供。食事での利益は得ないが、入居者と事業者へ循環する価値を生む。また、食堂の社員は、できるだけ入居者から雇用し雇用の創出もしている。

3 詳細設計 ビジネスを構成する具体的作業。製品、サービス、知財、収益獲得の計画と実施

interior
food

看板は無く鍵がかかった店舗と安くて美味しい食事

食堂のドアは常に施錠され、ルームキーを持っている賃貸物件居住者だけが入店できる。
朝食100円、夕食500円、体に優しい手作りの食事を財布に優しいワンコインで提供。

居抜き物件と料理人を合わせて採用、関わる人とwin-winに

管理物件で経営困難なレストランを居抜きで利用。物件の料理人は社員として雇用。
入居者には美味しい食事、実家の家族には安心、物件オーナーには安定した入居率を提供。

アナログなコミュニケーション

食堂で入居者となにげない日常的な交流を通して信頼を築く。
コミュニケーションが不動産管理のサービス向上にも繋がる。

4決断
ビジネス化の是非を誰がどのように決めるかプロセスにも新規性が求められる。

社長が基本設計から実行まで一気通貫

食堂の利益は放棄して食材と人件費に投入。広告宣伝費と捉え、自社のサービス精神を伝える将来性を見込んで決断。

5人材・組織
プロジェクトの参加者、意思決定者、協力事業者に適正な役割や関係性をつくる。

同じ釜の飯を食べる

社長は日に2,3回訪れ、社員や物件オーナーも食事する。
雇用はできるだけ入居者から採用。

6コミュニケーションデザイン
企業が提供しユーザーからフィードバックされる情報価値が市場形成の鍵となる

アナログで双方向なコミュニケーションが伸びしろを作る

食堂では入居者となにげない日常交流を通して信頼を築く。
HPは学生と淵野辺地域の暮らしに着目して情報内容を充実。

7将来性・展開
業界に与える影響、投資、展開プロセスの計画と事業展開後の柔軟な状況判断が将来性を決める。

入居者が拡散する情報で入居率安定。

入居者がSNSで情報を発信。高入居率維持を支える要因に。
コミュニケーションが不動産管理のサービス向上に繋がる。